今日の一冊 「いま、希望を語ろう」

今日は読み終わった後に、もっと日々をちゃんと生きようと思わせてくれる本を紹介します。

 

海外在住のYouTuberが紹介していた本で、その方は読み途中のようで、特に感想は言っていなかったのですが、調べてみたら日本語版もあったので、買って読んでみました。

 

いま、希望を語ろう

(英題:When Breath Becomes Air)

ポール・カラニシ作、田中文訳

 

全米100万部突破。AMAZON.COM/《ニューヨーク・タイムズ》1位の世界的ベストセラー、待望の邦訳。

ポール・カラニシ、36歳、脳神経外科医。
2013年5月、末期がんと診断される。
妻との新生活、夢の仕事の実現という未来が目の前から消えた。

でも、希望は捨てない。
医療現場への復帰をめざし、夫妻の子供を望み、死の直前まで書いた。限りなく前向きな生の記録を。

著者のポールさんは、38歳で亡くなったのですが、医師として、そして一人の人として、亡くなるまでの日々を書いた自伝です。

ポールさんの経歴は以下だそうです。

スタンフォード大学で英文学の学士号と修士号、さらには、ヒト生物学の学士号を取得し、ケンブリッジ大学で科学および医学の歴史・哲学の博士号を取得した。イェール大学メディカル・スクールを首席で卒業し、アルファ・オメガ・アルファ名誉医療協会の会員となった。その後、スタンフォード大学に戻り、脳神経外科の研修のかたわら脳科学の博士研究員として研究に携わり、アメリ脳神経外科学会の最高賞を受賞した。

経歴だけをみても非常に優秀な方と分かりますが、文章を読んでいても、とても有能な方だったことが分かります。

末期癌の患者であり、脳神経外科医でもあり、一人の夫、一人の息子、一人の父として、多角的に彼の様子や心情が書かれています。

病気に関するところは非常に客観的であり、どんな風に病状が変化し、どんな風に心身が変化していくのかが、素人の私でもよく分かります。

一方で、一人の人としての心情も丁寧に書かれていて、こちらも一人の人として、心打たれる記述がたくさんありました。

 

死は誰にでも訪れる。医者にも、患者にも。生きて、呼吸し、代謝する生物としての我々の運命だ。たいていの人生というのは死に向かう、自分にも、まわりの人にも起きることに向かう受動的な歩みだ。でも私もジェフも長年のあいだ、死と能動的にかかわり、天使と格闘するヤコブのように死と闘う訓練を受け、そうするなかで、人生の意味に向き合ってきた。

人は生まれたら、行き着く先は死です。脳神経外科医であるポールさんは、医師という職業を通して、死に能動的に関わっていました。

自身が患者になってもなお、試せる治療はあるのか、今の自分にできることは何かを常に考え、行動をしています。

そんな彼も最終的には、死に能動的にかかわることができなくなり、「準備ができた」と家族に告げるのです。

 

号泣です。自分だったら、こんな風に落ち着いて「準備ができた」なんて言えません。

読んでいる私が、医師になるためにこんなに頑張ってきたのに、なんで?と、彼の運命をなかなか受け入れることができませんでした。

「生きるとは」なんて哲学的なことを、普段は一切考えていませんが、こういう本を読むと改めて、自分の脳や体が動くうちは使っておこうと、身が引き締まる思いになります。

 

最後に彼が、娘さんに宛てて残した文章が愛に溢れていたので、紹介させてください。

これを読んだら、たとえお父さんとの思い出が多くなくても、ちゃんと愛されていたと感じられるのではないでしょうか。

これからのお前の人生で、自分について説明したり、じぶんがそれまでどんな人間だったのか、何をしてきたのか、世界に対してどんな意味を持ってきたのかを記した記録をつくったりしなければならない機会が幾度もあるはずだ。そんなときにはどうにか、死にゆく男の日々を喜びで満たしたという事実を、おまえが生まれるまでは一度も味わったことのない喜びで満たしたという事実を差し引かないでほしい。

 

内容の重さに比例せず、とても読みやすかったです。