今日の一冊 「ミッドナイト・ライブラリー」

10月になり、夜が長くなってきました。そんな秋の夜長にピッタリの本を紹介したいと思います。

 

マット・ヘイグ作、浅倉卓弥訳のミッドナイト・ライブラリーです。世界43ヵ国で刊行されるほどの話題の小説。

ノーラはその日人生のどん底にいた。飼っていた猫を亡くし、仕事をクビになり、
いくら悲しくても話を聞いてくれる家族も友人もいない。頭をめぐるのは後悔ばかり。

「私がもっといい飼い主だったら」「両親にも亡くなる前にもっと親孝行ができていたら」
「恋人と別れなければよかった」「故郷に戻らなければよかった」

生きている意味などもうないと、ノーラは衝動的に自らの命を絶とうとする。
だが目覚めたとき、目の前には不思議な図書館が佇んでいた――。

 

読後感が非常に爽やかで、目の前の霧がさっと晴れるような作品。読んでいる途中は、自分の過去を振り返ったり、今の自分をナナメに見てみたり、時間軸を超えたさまざまな感情が渦巻いてきます。ノーラの行動に鼻で笑ってみたり、そんな自分に罪悪感を持ったり、自分の気持ちがふらふら揺れて、疲れるのに読むのを途中で止められず、一気に読み切りました。

自分は大人としてはもうベテランのはずなのに、未だにいつも何かに迷って悩んでモヤモヤする。そのモヤモヤを一瞬でさっと消してどこかに追いやってくれて、なおかつ勇気をくれる。久しぶりに読み終わりが気持ち良い本でした。

人並みに、人生の分岐点と言えるような選択もありました。あちらを選んでいたらどうなっていただろうかと、妄想することはもちろんあります。

どちらを選んだとしても、選んだ理由と選ばなかった理由があり、その理由を最大限活かして、今どう過ごすのかということの方が重要だと、この作品を読んで思えました。そうしたら、今の人生がすんなりと受け入れられて、少し気持ちが楽になった気がします。

また少し経ったら、迷って悩んでモヤモヤするのだろうけれど。そうしたら、またこの本を手に取りたいと思います。

人生を理解する必要なんてないの。ただ、生きればいいだけよ。

年齢を重ねれば悩みは減るのだろうと思っていた若かりし頃。年齢を重ねれば重ねただけの悩みがあること知った今。ノーラのこの発言はとてもシンプルで、このマインドセットで心穏やかに過ごしていけたら最高ですね。